賃貸借契約にはいくつかの種類があります。

 

 

賃貸借契約の種類

一般的なものをご紹介します。

普通賃貸借契約(一般賃貸借契約)

もっとも一般的な賃貸借契約です。賃貸では2年契約が一般的です。

契約期間が満了したときは更新をし、賃貸借契約を継続することができます。更新時には手数料がかかる場合があります。
貸主からの更新拒絶や契約解除は、明け渡しを求める正当な事由がない限りできません。

契約の満了日が過ぎても契約の更新を行わないときは法定更新(自動更新)となります。
法定更新になると、借地借家法第26条の規定で「以前の契約と同条件で契約を更新した」とみなされ、契約期間も「定めのないもの」となります。

ちなみに、借地借家法第29条で契約期間は1年を超えるよう定められていて、1年未満の契約は「期間の定めのない建物賃貸借契約」となります。



契約の更新については賃貸契約の更新でも説明しています。



定期借家契約

定期借家契約とは、契約期間満了とともに契約が終了する賃貸借契約で、借地借家法第38条で定められています。更新はありませんので、契約満了時には退去しなければいけません。また、原則として中途解約はできません

契約の際には「契約の更新がなく、期間の満了で賃貸借は終了することを記載した書面を交付して説明しなければならない」とされています。
これは、契約締結後に入居者が「定期借家とは聞いていない」などとなるトラブルを防ぐためで、説明をしなかったときは、契約の更新がないこととする定めは無効となり、定期借家とは認められず従来の正当事由による解約制限のある借家契約(通常は普通賃貸借契約)となります。必要なのは書面交付と口頭説明の両方で、片方だけでは定期借家とは認められません。(※ 2021年に借地借家法が改正され、電磁的記録も書面と同じ扱いになりました)

定期借家契約締結には、契約書とは別個 独立の定期借家に関する書面の交付が必要と判断した事例もあるため、賃貸借契約とは別の独立した書面で説明することが多いです。これらは借地借家法第38条に則っているため、この書面は通称「38条書面」と言われています。

定期借家契約は、1年未満の短期契約が認められない普通賃貸借契約とは違い、期間の短さにも特段の制限はないため「1泊2日」でも契約可能となります。

1年以上の契約の場合は、貸主は契約者に対し、契約満了の1年から6ヶ月前までの間に「期間満了で建物の賃貸借が終了する」旨の通知をしなければならないことになっています(この期間を「通知期間」といいます)。
貸主が通知期間内に通知をするのを忘れてしまった時などは、実際に通知をした日から6ヶ月後に契約が終了するように契約期間が延長されます。

契約満了後も住み続ける場合は、更新ではなく再契約をすることになります。これには貸主、借主双方の合意が必要です。
契約更新とは違い、賃貸借契約をもう一度締結することになるので手間がかかり、場合によっては連帯保証人の変更などを求められることがあります。また、再契約には手数料がかかることが一般的です。

定期借家契約では特約がない限り、原則として借主から中途解約はできません。もし中途解約するならば賃貸借の残存期間の賃料相当額(契約満了まで3ヶ月あるなら家賃3ヶ月分)を貸主に支払って退去するか、貸主との合意で解約するしかなく、合意の場合でも借主は違約金などを貸主に支払うことが多いです。

ですが、法律で定められた例外はあります。
居住用建物の賃貸借(ただし200㎡未満の物件に限る)ならば、「賃借人にやむを得ない事情が発生し、借主が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったとき」は中途解約ができるとされています。
この場合、解約の申入れの日から1ヶ月を経過することによって契約は終了します。
中途解約ができる「やむを得ない事情」とは「転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情」とされていますが、「その他」にあてはまる事情は借主それぞれの状況で変わってくるので注意が必要です。(定期借家契約の契約期間中における、賃借人から中途解約ができる「やむを得ない事情」とはなにか。

定期借家契約の中途解約は特約として記載するのが一般的です。定期借家契約を締結するときは、念のため中途解約をすることも考えて契約をするようにしてください。



【参考】



普通賃貸借契約と定期借家契約の違い

普通賃貸借契約と定期借家契約の大きな違いは、「更新ができるかどうか」

普通賃貸借契約は借主が手厚く保護されていて、正当事由がない限り貸主からの更新拒絶ができないことになっています。正当事由の基準も曖昧なため、一度物件を貸すとなかなか返してもらえない可能性があり、転勤が終了するまでなどの期間を限定して物件を貸したいという場合には向きませんでした。
そこで不動産賃貸市場に新たな物件を供給することを目的として定期借家契約ができました。

普通賃貸借契約は通常2年契約ですが、定期借家契約は契約満了をふまえた契約期間にするため期間はマチマチです。物件によっては2年以上の契約もあり、一般の賃貸借契約で2年ごとに更新料を払うよりもお得に借りることができます。
また契約満了とともに必ず退去してもらうというデメリットがあるため、家賃も若干安く抑えられている傾向があります。

契約の手続きの流れに普通賃貸借契約も定期借家契約も大きな違いはありません。
ただし、定期借家契約は「更新はしない旨」を書面で説明しなけらばならない決まりとなっています。これがないと定期借家契約とはみなされず普通賃貸借契約になってしまします。



貸主から見た定期借家契約

定期借家契約については、貸主側から見るとメリットがわかりやすいです。

貸主にとって定期借家契約とは「期間満了時に確実に契約を終了させることができる」というのが最大のメリットになります。

これは、「将来自分が使うかもしれない」という理由の他に、「問題のある入居者を退去させることができる」という理由もあります。
前述の通り、普通賃貸借契約では借主を簡単に退去させることができません。例え家賃を払わなくても、賃貸契約書に違反していてもそれは同じです。契約更新をしなくても法定更新となり、契約は続いていきます。貸主は、退去させるためには通知を出したり裁判したりと膨大な労力を使います。

賃貸借契約書に違反していなくても問題のある入居者というのもいて、例えば、同じアパートの入居者に難癖レベルのクレームをつけまくり、結局そのアパートの入居者がその人を除いて全員退去した、という話も聞いたことがあります。

こういった困った入居者に遭遇したことがある貸主の場合、賃貸用の物件を所持していてもあえて定期借家契約を選ぶこともあります。



もう一つのメリットが再契約。
普通賃貸借契約は「更新」ですが、定期借家契約は「再契約」となり、改めて契約を結びます。

普通賃貸借契約でも更新時にはいろいろ確認はしますが、あくまで「更新」ですので、入居時の契約と同じように厳密には行いません。
定期借家契約は改めて契約をするので、入居時と同様にいろいろな書類を提出してもらうため現状をより正確に把握できます。内容によっては連帯保証人の変更を依頼したりも可能です。

定期借家契約は、契約の際に定期借家の契約書が必要だったり、契約満了の前に契約者に通知をしなければいけないなどの手間がありますが、安定した賃貸管理を求める貸主にとっては、それを差し引いても大きなメリットがあります。

逆に借主側から見たメリットですが、賃貸物件を借りやすくなるというのがあります。
高齢の方やフリーで働いている方は賃貸物件を借りようとしても審査に落ちて借りられない、ということがあります。
これは、普通賃貸借契約だと一旦締結してしまうと終了が難しいため、生活が不安定な人には貸したがらないという貸主側の事情もあります。
ですが、定期借家契約ならば確実に契約は終了しますから、貸主側も比較的審査が甘くなります。
気に入った物件が見つかったのに審査に落ちてしまったいう人は、不動産会社に「定期借家契約ではどうか」と提案してみてはどうでしょう。